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タンホイザー

ディートマル・ホラント『オペラのあらすじ』(大崎滋生訳を多少修正)




第1幕

 タンホイザーと呼ばれる吟遊詩人ハインリッヒ・フォン・オフターディンゲンは、官能的な愛を体験したいと、ヘルゼルベルク、すなわち〈ヴェーヌスベルク〉、つまり愛の女神ヴェーヌス自身の館?に逃避した。しかしここで彼を捉えるのは官能的快楽一辺倒の生活である。彼は逆に自然と社会にあこがれる。ヴェーヌスは、あらゆる手練手管を弄しても、彼を自分のもとにとどめることができない。しまいに彼女は、もし世界、すなわち因習的な騎士社会が彼を拒んだら、救いをまた自分のところで求めるようにと、懸命に頼むのである。タンホイザーは自分の救いは聖母マリアにあると叫ぶ。

 この瞬間にヴェーヌスベルクは消えて、彼は自分がワルトブルクの谷にいることに気づく。若い牧人がシャルマイを奏でている。敬虔な巡礼の一団が通る。感謝の祈りを捧げようとしてやってきた狩の一団が、もどってきた背徳者タンホイザーを見つける。その中にはチューリンゲン方伯とヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハがいて、彼らはタンホイザーを、ワルトブルクの歌手の仲間に連れ戻すことに成功する。決め手となった言葉は、方伯の姪であり、タンホイザーがかつて捨てた〈エリザベート〉の名であった。


第2幕

 エリザベートは、タンホイザーが去って以来足を踏み入れなかったワルトブルクの歌手の広間に、喜びにあふれて歩みいる。ヴォルフラムがタンホイザーを彼女のところに連れてくる。そしてエリザベートは今もタンホイザーのことを思っていることを伝えようとする。彼女を同様に愛しているヴォルフラムは、エリザベートを諦めなければならない。

 タンホイザーの帰還は盛大に祝われ、その時方伯は、愛について歌いあう、くだんの〈歌合戦〉を催させる。エリザベート自身が勝利者に賞を授与することになる。因習的な歌手たち、ヴォルフラム、ヴァルター(フォン・デア・フォーゲルヴァイデ)、ビテロルフが愛を(叶わぬ)理想としてしか歌うことができないのに対して、タンホイザーは仰天する人々の前で、真の愛とは何であるか、すなわち純粋な享楽であると、公言する。しかも彼は、ヴェーヌスと別れるくだりの、その歌の第4節を激しく興奮した調子で感動的に歌い、ヴェーヌスベルクに滞在していたことを告白する。女性たちは直ちに広間から退散し、騎士たちは剣をぬいてこの無頼漢に迫る。だがエリザベートが彼の前に立ちはだかり、彼の罪を悔い改める機会を与えてほしいと願い出て、憤激した男たちを静める。方伯の提案により、タンホイザーは、彼の肉欲の罪に対する赦しを教皇から得るために、ローマへ行脚する巡礼の一行に加わる

第3幕

 ワルトブルクの谷のマリア像の前でエリザベートが、巡礼者たちの帰還を、その中に罪をあがなったタンホイザーがいますようにと祈りつつ待っている。しかし巡礼者たちは彼を伴わずに帰ってくる。彼女は絶望のあまり、聖母マリアに、自分の命がタンホイザーの罪の購いとして受け入れられるように、熱心な祈りを捧げる。ヴォルフラムが彼女のところに歩み出て、彼女を家に連れて帰ろうとするが、彼女は拒絶する。ヴォルフラムは彼女に宵の明星(=ヴェーヌス)に捧げる歌で諦めの挨拶を送る。そうしている間にあたりは暗くなり、タンホイザーがひどく打ちひしがれた様子で、ワルトブルクの谷に近づいてくる。彼は、ヴォルフラムの強い懇願で、ローマでの苦い経験を物語る。教皇の手にしている杖がもはや青々とした芽を飾ることがないように、彼タンホイザーに救いが与えられることはない、と教皇は宣言したという。それ故タンホイザーはヴェーヌスベルクに戻ろうとする。ヴェーヌスが遠くに見えたとき、ヴォルフラムはもうこれが最後だと思って、〈エリザベート〉という決め手となる言葉を語りかける。これが決定的な転機を呼び起こす。朝の曙の中で、騎士たちの行列が、タンホイザーの罪の犠牲となったエリザベートの亡骸とともに近づく。タンホイザーはその棺のかたわらにくずおれ、息絶える。かれが救済されたしるしとして、若い巡礼者たちが、思いもかけずに瑞々しい若芽を吹かせた、教皇の杖をもってくる。





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