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ワーグナー『パルジファル』あらすじ

初演:1882年7月26日、バイロイトにて


【背景・前史】

 モンサルヴァート山にふたつの相反する世界が存在している。北側のゴート領の方には聖杯堂があり、聖杯と槍という、生命の糧を与えるふたつのシンボルを擁している。南側のアラビア領には本能のままに生きて、男を誘惑する女たちのたむろする魔法の城がある。現在の聖杯王アンフォルタスの父ティトゥレルは、天使たちによって、キリストの最後の晩餐に使われた聖杯と、十字架上の救世主キリストの脇腹を突いた槍とを守るように命じられたのである。槍による傷から流れ出たキリストの血は、聖杯で受け止められたという。聖杯王は聖杯によって生命の糧を与える典礼を執り行った。聖杯騎士としてこの儀式に参列するための条件は、欲望から解放された者の認識に支えられた純潔なのである。
 山の反対側には魔術師クリングゾルが住んでいる。クリングゾルは昔は敬虔な隠者であったが、性欲を克服できずに、自分自身を去勢することで純潔を得ようとしたのである。しかしクリングゾルは聖杯領に受けいれられなかったので復讐を謀った。彼は魔法の城と花園とをつくり出し、花の乙女たちをおいて聖杯騎士を誘惑し、槍と聖杯を奪い取ろうとしていた。
 これら両方の世界に住んでいるのがクンドリである。彼女は眠りによって対立する二つの世界を往復する。彼女はかつて、十字架上で苦しむキリストを嘲笑したために、聖杯領では贖罪者・奴隷として、異教の花園ではクリングゾルの呪縛によって誘惑者として、永劫の罰を受けなければならない。彼女の誘惑にうちかてる男だけが、彼女の罪を贖えるのであり、それによって彼女に死が許されるのである。
 アムフオルタスは、クリングゾルを征伐するために出陣したが、すでに多くの聖杯騎士たちと同じく、魔法の花園の官能的な力に因われてしまった。クンドリはアムフォルタスを誘惑して関係を結ぶ。その間にたずさえていた聖なる槍をクリングゾルに奪われ、こともあろうかその槍によって逆に不治の傷を性器に受けてしまう。騎士グルネマンツの助けで脱出するが、その傷と苦しみとは聖杯の儀式の執行にも差し支えるほどになる。
 神託によれば、〈同苦〉によって知を獲得する純粋な愚か者が彼を救済することになるという。


【あらすじ】

第1幕

 人々は、傷に苦しむアンフォルタスの痛みを治療しようと試みている。しかし、いくらよい薬を調達しても、それは直接痛みを一時的に和らげることしかできない。そこに一羽の自鳥を射落した少年が連れてこられる。グルネマンツは、この愚かな少年が預言されている救済者であるかもしれないと予感し、そのために少年を聖杯堂の典礼に連れていく。しかし少年は、その典礼が何を意味するのか分からない。そのためグルネマンツは儀式の後、少年を聖杯領から追い出してしまう。

第2幕

 少年は、魔法の城に侵入し、防戦する騎士たちを蹴散らす。少年はクリングゾルの花の乙女たちに取り囲まれるが、そこに誘惑者に変身したクンドリが現れる。彼女は少年を、パルジファルという名前で呼ぶ。母親のように、娼婦のように、クンドリはこの純潔なる少年を精神的に、そして性的に眼覚めさせようと試みる。彼女がパルジファルに、性的交渉への橋渡しとなる接吻をした瞬間、事態は急変する。パルジファルはアムフォルタスの苦しみを理解し、また彼自身の救済者としての使命を理解する。クンドリはパルジファルを誘惑し、また憐れみを請うが、効き目はない。そこにクリングゾルが現れ、槍を投げつけるが、槍はパルジファルの頭上で停止する。パルジファルがその槍を振ると、魔法の城は瓦解し、あとにはただ荒野が残る。

第3幕

聖杯領では、アムフォルタスは今や聖杯の典礼の執行を拒否し、死を待ち望んでいる。聖杯の恵みを受けることのできない聖杯騎士たちも、心と体の飢えに苦しんでいる。グルネマンツはキリスト受難日である聖金曜日に、贖罪者の姿で眠っているクンドリーを発見し、眼覚めさせてやる。そこにひとりの騎士があらわれるが、グルネマンツはそれがかつて聖杯堂から追い返した少年であることを知る。パルジファルは、取り返した聖なる槍を携えている。クンドリは、マググラのマリアのようにパルノァルの足を洗い、グルネマンツはパルジファルに香油を注いで聖杯王とするのである。パルジファルは聖杯堂におもむいて、アムフォルタスを苦しみから救済し、聖杯の式典を執り行う。クンドリは安らかな死を迎える。



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